【有識者向け】歯科におけるカンナビ類の研究報告

この記事では。麻に含まれるカンナビ類が歯科におけるどのような作用が認められるかの研究報告をまとめました。
カンナビ類は様々な有用性があると研究が進んでいます。ただ、現在まで研究が進んでいる他の成分などと比較すると、注目されている段階のため情報量は少なく(成長期)、まだまだ研究が必要な成分であることも事実ですが、その有用性は様々な論文で認められており更なる期待が寄せられています。

ラットの歯髄のカンナビノイド(CB1)の受容体がある

ラットの上あごの大臼歯28本を観察したところ、歯の神経がある歯髄において、その一番外側、象牙質との境にカンナビノイド1(CB1)の受容体を発見しました。これは、CB1受容体が歯の痛みに関与している可能性が考えられます。

口内炎の治癒について

ラット60匹の舌に、組織採取で使う生検パンチを用いて直径5mmの口内炎を作って3つの群に分け、それぞれ毎日0, 5, 10mg/kgのカンナビジオールを投与しました。3日目と7日目に見た目および組織学的に口内炎の治癒状況を確認しました。見た目では3日目および7日目はそれぞれ特に違いが無かったのですが、プレパラートによる組織検査では、3日目では0mg/kg(コントロール群)と比べて5, 10mg/kgカンナビジオールを投与された群では炎症反応が少ないことがわかりました。しかし、7日目の組織検査ではその差はありませんでした。
以上より、カンナビジオールは、傷の治癒の初期段階における抗炎症作用を示します。しかし治癒を促進するまでの効果は無い、という結果でした。

カンナビジオールは口腔粘膜炎の治療薬となりうるか?

 がん治療における化学療法、放射線療法では、その有害事象(副作用)として口内炎(口腔粘膜炎)を認めます。これは治療ががん細胞だけなく健康な細胞にも影響するため、そのような影響に弱い組織である口腔の粘膜に口内炎ができやすいという特徴があります。その予防および治療にカンナビジオールが有効かどうか、1998年から2016年の論文報告をもとに検討した論文です。
 とりまとめの結果、カンナビジオールには人体への安全性があり、抗酸化作用、抗炎症作用、鎮静作用がありそうですが、まだ不十分であり、さらなる研究が必要です。

カンナビジオールは歯槽骨吸収を抑制する

 ラットを用いた実験です。第一大臼歯の周囲を結紮して歯周炎を起こします。これを何も投与しないコントロール群、生理食塩水だけを投与する群、毎日5mg/kgのカンナビジオールを投与する群の3つに分けます。30日後に下あごの組織検査を行いました。歯槽骨の比較では、カンナビジオール投与群において歯槽骨の吸収が抑制されており、骨を吸収する破骨細胞を活性化するRANKL/RANKという因子が減少していました。歯肉の比較では、IL-1betaとTNF-alphaの産生が抑制されており、炎症の時に増加する白血球のうちの好中球が減少していました。
 以上のことから、カンナビジオールは歯周病における歯槽骨の吸収を抑制する効果を認めました。

Cannabis sativaの持つ抗菌・抗真菌作用について

 Cannabis sativaには86種類のカンナビノイドがあり、その構造から11種類に分類されます。
 その様々な成分による抗菌・抗真菌作用について、過去の15本の論文をとりまとめたもの(Review)です。
 特に、Cannabis sativaの葉には、大腸菌である「Escherichia coli,」 嫌気性菌の「Pseudomonas aeruginosa, MRSA」などの黄色ブドウ球菌である「Staphylococcus aureus,」 口腔の粘膜に見られるカンジダの原因真菌である「Candida albicans」への抗菌・抗真菌作用が明らかとなりました(具体的にどの成分が有効であったまでの記載はなし)。

カンナビノイドのプラーク(歯垢)への有効性(歯科商品との比較)

 18歳から45歳の60名を口腔内の状況から6つのグループに分類しました。全員から爪楊枝で歯垢を採取してペトリ皿に撒き、カンナビ類のうちの5種類(cannabidiol、cannabichromene、cannabinol、cannabigerol、cannabigerolic acid) および市販の歯磨剤(Oral B、Colgate、Cannabite F)の有効性を比較しました。
 その結果、カンナビ類のいずれも市販の歯磨剤に比べてとても良好な抗菌作用を示しました。

まとめ

 カンナビジオールは抗菌作用と骨吸収抑制作用があるため、歯周病への有効性があります。しかしサンプル数が少ないなどエビデンスとしてはまだ弱く、さらなる研究が必要です。
 カンナビノイドの有用性に着目して今後は歯科への影響や様々な研究が行われいく事でしょう。

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